お彼岸といえば「ぼたもち」や「おはぎ」をイメージする人が多いと思います。
私が子どもの頃、お彼岸が近づくと、いつも母が家で「ぼたもち」を作ってくれました。半分つぶしたもち米をたっぷりのつぶあんで包んであり、とても楽しみでした。
ですから、私は、家で作るぽってりしたものが「ぼたもち」で、和菓子屋で売っている小ぶりでおしゃれなものが「おはぎ」だと思っていました。←違いますよね!
「ぼたもち」という庶民的な響きから、方言なのかな、とも思っていたくらいです。でも、この二つ、実は季節によって呼び方が違う、同じ食べ物だということをご存じでしたか?
目次
●ぼたもちとはどんなもの? 名前の由来は?
「ぼたもち」は漢字で「牡丹餅」と書き、春に咲く牡丹の花に似ていることから付けられた名前で、春のお彼岸に作るものを「ぼたもち」と呼びます。「棚からぼたもち」ということわざがあるように、古くから日本人にとってはなじみの深いお菓子です。
●おはぎとはどんなもの? 名前の由来は?
一方、「おはぎ」は作り方は同じなのですが、漢字で「御萩」と書き、秋の七草の一つである萩の花の様子が小豆に似ていることから、秋のお彼岸に作るものをこのように呼ぶようになりました。
●この二つに違いはある? ない? その理由は?
この二つは基本的に同じ食べ物なのですが、牡丹は大きくて丸い花、萩の花は小さくて細長いことから、「ぼたもち」は大きめで丸い形、「おはぎ」は小さめで少し細長いたわらのような形に作ります。
また、秋が小豆の収穫期であることから、収穫したての小豆を使うことができる秋は皮ごと使ったつぶあんを、皮が固くなった小豆を使う春には皮を取り除いたこしあんを使用していました。
ですから、こしあんで作った大きめで丸いものが「ぼたもち」、つぶあんで作った小さくて細長いものが「おはぎ」ということになりますね。
下の写真では、左がぼたもち、右がおはぎです。
ぼたもち(左側)とおはぎ(右側)
●なぜ春分の日や秋分の日に食べるの?
では、なぜ春分の日や秋分の日に食べるのでしょうか。1年のうち、昼と夜の長さが同じになる春分の日と秋分の日を中日とした前後3日の計7日間を「彼岸」と呼び、この期間に仏様の供養をすることで極楽浄土へ行くことができると考えられていました。
おもちには自然への感謝と五穀豊穣への祈りが込められており、日本の行事に欠かせないものです。
また、小豆には邪気を払う力があると信じられていました。
昔は砂糖はとても貴重なものだったので、おもちを砂糖で甘く煮た小豆で包んだ「ぼたもち」といえば大変なごちそうで、大切なお客様のおもてなしやお祝いで振る舞われ、法要の際にも必ずお供えしていました。
ですから、仏様やご先祖様への感謝の気持ちを込めて「ぼたもち」をお供えして、家族の健康を願い、この日に食べるようになったといわれています。
●あとがき
食べ物にまで季節の花を意識した名前を付けるなんて、四季のある日本ならではですね。このような美しい呼び方や風習は、いつまでも伝えていきたいものです。
私も秋分の日には「おはぎ」作りに挑戦してみましょうか。母のようにうまく作る自信はありませんが…。